たったひとつ命を盾に いま振りかざす感傷

melon_kinenbi2008-07-30

土曜日はバルドラール浦安のホーム初戦へ、そして日曜は「JOYSOUND presents 超時空スーパーライブ デビュー!ランカ・リー with シェリル・ノーム」@ Zepp東京へ行ってきました。


はっ?おっさん今なに言うた?という方のために説明しますと、現在深夜枠で放送されている超時空要塞マクロスFというアニメ番組がありまして、そこに登場する二人のヒロインによるライブが開催された訳です。
ヒロイン二人はアイドル、並びに歌姫といった設定でして、アイドルのランカ・リー中島愛さんが声優も歌もこなし、歌姫のシェリル・ノームは声優と歌を別々の人が担当し、歌はMay'nさんという方が担当、つまるところこの日は中島愛さんとMay'nさんによるライブが開催されたという訳です。


ライブはハロプロではおなじみの昼夜二回公演、その夜の部で開場時間には現地に着いたのですが既に入場が始まっていて驚かされます。
中ではお約束の物販の他に何故かカラオケブースが・・・ツアータイトルにもあるようにJOYSOUNDとの連動企画なのでした。


ライブは大まかに分けて3部構成となっていて、最初はランカ・リー こと中島愛さん、次がMay'nさん、その後超時空?的な展開となり、このライブはあくまで序章であるような突発的な終わり方で幕を閉じます。
ここで言っておかなくてはいけないのはこのライブチケットの価格が2100円ということでして、ドリンク代500円が別途必要とはいえ明らかに安いこの価格設定が何を意味していたのかということです。


最初に現れた中島愛さんは劇中での設定同様このアニメが芸能界並びに歌デビューで、初々しさの感じられるステージでした。
シングルカットされている星間飛行という曲はまさに王道アイドルソング的な歌詞、楽曲、振り付けなのですが、どうもヲタっぽい匂いを避けたいらしくスクリーンにはノリにくい(やりにくい)振りが流されます。
これがぎこちないモノがありまして、もうちょっと自然にまかせてもいいかなぁと思いました。


あくまで一例ですがこの曲のBメロは典型的なPPPHノリでして、名前をコールするか否かは別にして手拍子は絶対そっちの方がしっくり来る訳です。
Aメロはじっくり聴き、Bメロで盛り上げて、サビに繋ぐという流れこそThat's王道アイドルソングなわけで、そこら辺は普通でいいじゃんと思わされました。


ちなみにこの曲の作詞は松本隆さんで、曲中には「キラっ☆」と叫ぶ箇所があるのですが、このパートがどういった経緯を経て完成を見たのかが松本さんのサイトにて語られています*1
作曲者である菅野よう子さんのオーダーに対し松本さんが出した回答、そして「赤道小町ドキッ」、「誘惑光線・クラッ」に続く3部作構想・・・本当に歌謡曲って面白いと思わされるのでした。


曲の話ばかりになりましたが彼女自身はめっさ肝が据わっている印象で、トークはとてもゆっくりとしゃべりますし、歌える音域云々はさておき声自体にぶれがありません。
さらにブログを読むと80年代のアイドルが好きだとかあげくの果てにはニュージャックスイング最高とかあったりして、Teddy Rileyを心の師匠とあがめている自分としては一体このコは・・・と思う訳です。
多分お父さんの影響を受けてとかそんな感じだとは思うのですが、そういった感性のコが今という時代に80's路線でアイドルをやるというのがとても面白いのでした。



2人目のMay'nはMay'nさんと言いたくなる様な存在感、劇中のキャラクターがSな感じの女王さまなため歌う曲もそういったモノが多く、彼女自身もそういった歌いっぷりに拍車がかかっていました。
2クール目に併せて用意された曲は特に強い気持ちを歌う激しいものばかりで、予備知識のない人には入りづらいかなぁという印象です。


残念だったのはミキシングで、もっと彼女を引き立ててあげられる様には出来なかったのだろうかと2曲目くらいから思いました。
彼女は既に自分の歌唱をモノにしていて、どんなタイプの曲でもほぼ完璧に歌いこなせるスキルも持ち合わせている訳ですが、音圧自体はそれほど大きくありません。
それなのにカラオケとボーカルが同じくらいのボリュームで、せっかくの彼女の声が響かないのです。
PAとの兼ね合いで結構微妙なところだとは思うのですが、歌う曲の傾向からいえばボーカルはもっとプッシュするべきです。


個人的にライブの中で一番ノレたのは彼女が歌う「What 'bout my star?」、彼女自身もR&Bが好きみたいなのでもっとこっちよりの曲を歌わせてあげて欲しいと思いました。


ちなみにこの2人は同級生で2人とも10代なわけですが、そこら辺での対比もとても面白いことになっています。
どちらも大手事務所に所属しているのですが、このボーカルのキャスティングはこの作品を成功させている大きな要因のひとつだと思っています。


先に星間飛行での強制振り付けを取り上げましたが、本人の踊りも含めて何となくぎこちなさが残る中島さんサイドに対して、May'nさんサイドはかなりしっかりした方向性が出来ており、歌の乗らないところではヲイヲイコール+拳突き上げがデフォ状態(笑)、どちらが良いとかでなくそこら辺もしっかりと色が分かれているのが面白いのでした。


衣装もふわふわでひらひらな中島さんに対し、May'nさんは黒一色でややボンテージ気味、劇中の設定がそのまま生かされているわけですが、ステージでの競演自体は劇中ではまだ実現されていないわけで、そこら辺のケミストリー具合も興味深いのでした。



そしてここから最初にも書きましたがライブは超時空的展開を魅せます。OSTアルバムに収録されたピアノ曲が映像と共に流れ、まぁ普通に考えると2人の衣装替えタイムな訳でちょっと一息かぁとなる訳です・・・が、何やら壇上にライトが差し込むように照らされ、淡いベールごしにピアノを弾く女性の姿が・・・か、菅野さんやっ!というわけで会場にどよめきが起こります。
そして聞き覚えのあるワンフレーズがつま弾かれたかと思うと今度は右手からもう一人の女性が登場、スローなテンポで、空の上から地上の草の葉一枚にまで届く様な、強くて、それでいて優しくて、心をわしづかみにするような透き通った歌声が会場に響き渡ります。


「君は誰とKISSをする・・・」そう、坂本真綾さんです。何なのでしょうかこの展開、事前に公表されることもなく、彼女は菅野さんのピアノでもって「トライアングラー」のバラードVerを披露、予想を遥かに超えたサプライズに鼓動が激しくなり、目頭が熱くなります。


さも既知のように書いていますが、自分はそれほど坂本さんという方を知りませんでした。OSTアルバムの中で一番好きな楽曲はトライアングラーでしたが、彼女はこのアニメではオープニングだけの印象が強く、あまりプロモーションにも関わっていません。


この曲での彼女の歌唱はEPOさんをもっと軽やかにした感じでして、もしかしたらライブでは再現出来ないのではと勝手に思ったりしていました。
しかし実際にライブで聴くとどうでしょう・・・圧倒的音圧、圧倒的クリアな歌唱は生ピだけの伴奏で際立っているのを差し引いても凄まじい存在感を発揮、彼女は本物なのでした。
後で公式サイトを見て知ったのですが、彼女はアニメ関連以外の芸歴も長く、例えば元カレッツァ富田麻帆さんも出演していたレ・ミゼラブルにはエポニーヌ役で出演されていたりする訳です。


先に出演したお二人にはちょっと気の毒なのですが、この瞬間が間違いなくこのライブのピークでして、このサプライズだけでチケット代は十分元を取っていたと思います。
そして彼女の類い稀な歌を聴きながら、このトライアングラーという曲に対する認識を新たにするのでした。


この曲はガブリエラ・ロビンという人が作詞をしてまして、ちょっと判りにくい構成になっています。
加えてサビの部分が強烈なので歌詞全体の印象が薄くなりがちなのです。
しかし生で聞くとこの歌は女の子のとても強い気持ちを激しく詠った歌詞だということが感じられ、どちらかというと淡白に聞こえる坂本さんの歌唱も、この曲のテンポも、それを希釈するためなのかなぁと思わされるのでした。


その後はまた中島さんとMay'nさんの競演でオーラスを迎え、突如エマージェンシーコールと共に公演は中断、この補填公演が10月にパシフィコ横浜で行われる旨が発表されます。
そのスクリーンに映し出されたタイトルの最初には「カンノヨーコ presents」の文字が、それを見て震えたのは自分だけではないはずです。


真っ先に思い浮かべたのはSHIBUYA AXで行われた伝説とも言うべきカウボーイビバップのシートベルツ公演で、今日のアカペラ演出も鑑みれば、下手するとフルバンド、オケまで持ち込んでとんでもないことを仕出かしてくれるかもしれないわけで、そのto be continued具合にはやられたーなのでした。


その後は女性には恥ずかしい歌詞のSMSのテーマを合唱しアンコールなしで終了、結局菅野さんと坂本さんはエンディングでもベールの向こう側でしっかりと顔を見せてはくれませんでした。
ライナーノーツによればこのトライアングラーという曲は同名のトレンディドラマの主題歌という設定だそうで、そこら辺で線引きをしたのかもしれません。

その時は少し残念に思いましたが、家に帰ってよくよく考えてみればまるで学芸会のようなしょぼい雲の書き割りと鉄骨組の段差ステージに、ベールをたらしてグランドピアノ持ち込んで生演奏付きというだけで十二分に贔屓されてるわけで、あれでちょうどバランス取れてたのかもと思い直すのでした。


ちなみにこの公演は東京と来週開催される大阪のみ、そのあとは10月まで空いてしまうわけで、もしこの作品に興味がある人で東京公演を見れなかった方は多少多めのお金をはたいても大阪公演を見に行かれるべきだと思ってしまいます。
チケット料金を鑑みてもらえばこれほど盛りだくさんな公演はないと思いますし、よりこの作品が魅力的に感じられるのではないかと思います。


えっ、横浜最終公演ですか?もちろん行きますとも!
シェリルの黒T着て紙飛行機折って行こうと思います!